春風春水一時に来る 「府西池」より |
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| 名詩メルマガから、今月は有名な漢詩が送られてきました。この時期にピッタリの名詩です。
「府西池」 白居易
柳無気力枝先動 池有波紋氷尽開 今日不知誰計会 春風春水一時来
<読み下し文> 「府西池」 白居易
柳に気力無くして枝先ず動き 池に波紋有りて氷尽く開く 今日知らず誰か計会*するを 春風春水一時に来る
<日本語読み> ふせいのいけ はく きょい
やなぎに きりょく なくして えだ まず うごき いけに はもんありて こおり ことごとく ひらく こんにち しらず だれか けいかい するを しゅんぷう しゅんすい いっときに きたる
<通釈> しだれ柳が力なく風の吹くままに枝をなびかせた、と思ったら 池に波紋が生まれて、池の氷もすっかり溶けてしまった。 一体、だれがこんなにもぴったり計算したのだろうか? 今日のこの日に、春風と春水が一度にやって来るように。
*計会とは一見間違いのように見えますが、 【広辞苑】よると けい‐かい【計会】‥クワイ (ケイガイとも) はからいあわせること。計画。和漢朗詠集「今日知らず誰か―せし」 物事の一度に重なりあうこと。さしつかえること。太平記4「歳末の―に依つて暫くさしおかれぬ」 会計。〈字類抄〉 やりくりがつかないで困窮すること。貧乏。あきみち「今は―によつて細々の音信もなかりけり」
この漢詩と引き合いにされる出される和歌に、古今和歌集を代表する歌人、紀貫之の歌があります。
袖ひぢてむすびし水のこほれるを 春立つ今日の風やとくらむ
「春風」と「春水」とを織り込んだ、やはり立春の名歌です。 紀貫之のこの歌は、「袖ひぢてむすびし水」(袖を濡らして手ですくって飲んだ水)に 夏 を詠い、その水が「こほれる」により 冬 を詠い、更に「春立つ今日」と 春 を詠むという、三十一文字の中に三つの季節を入れたという工夫も光るところです。
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2010年2月24日(水)23:44 | トラックバック(0) | コメント(0) | 書籍 (短歌、漢詩) | 管理
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