イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む |
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| イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む 平凡社ライブラリーoffシリーズ) 宮本 常一 (著)
1878年(明治11)6月から9月にかけて東京から北海道(蝦夷)までの旅行の記録で、明治維新当時の日本の地方の住居、服装、風俗、自然を細かく書き留めてあり、近代以前の日本の情勢を知ることのできる資料である。またアイヌ人に関する記述も豊富にある。
1885年版で省略された部分の主なものが、楠家重敏他訳『バード 日本紀行』、細部が高畑美代子訳『イザベラ・バード 日本の未踏路 完全補遺』として出版された。さらに1880年版からの全訳が、時岡敬子訳『イザベラ・バードの日本紀行(上・下)』として出版されている (Wikipedia)より この本はその『日本奥地紀行』をテキストにして、宮本常一が読み解いた解説書みたいな物です。
感想 著者の意見が所々に入っています。もっともなことが多いのですが、解決にはならないような意見もあります。やはり民俗学をやっている人だから、教育学とか政治学の専門家ではないので、首をかしげざるを得ないところもあります。 現象だけにとどめておいて、それ以上書かない方が良かったのではと思いました。
イザベラ・バードは、明治と言っても江戸時代を残している奥地の貧農や、整備されたと言っても、江戸時代の駕籠かきから人力になったような人達、馬子のようなものまで詳しく観察しています。
その時代(1859年頃)世界で最も安全と言われていた、イギリスでさえ、ロンドンからドーヴァーまで一人歩きは、危険で出来ないとされていました。同じ時期(安政6年)東海道の女の一人歩きはいくらでもありました。
それほど日本は安全な国だったのです。治安が良いというのは、そこに暮らす人達が平和だったのです。農村などでは夜路戸締まりをする家は、ありませんでした。
江戸末期いろんな事が起こりましたが、地方は相変わらず平和で、特に下層階級とされていた労働者が勤勉で、正直で、自分の仕事に誇りを持っているのに驚かされています。
確かに農村は不衛生で、蚤や虱に悩まされますが、明治初期に通訳を連れて外国人の女性の旅をした彼女は、貧しい人々に触れ合って日本は天国のような国だと書いています。
他の著書でも読んだことがありますが、当時の西洋人が、日本が文明開化、富国強兵を唱えながら、西洋の真似からドンドン西洋化して行く姿を見て、日本人が持っていた美徳が失われていくのを惜しんでいる文章が沢山あります。
これは国が富むと言うことではなくて、300年にわたる平和がもたらした素晴らしい美徳であったのです。それでも第二次世界大戦前までは、人の心の中に随分残っていました。
今でも日本人が持っていた残り少ない美徳が、更に無くなっていくのを惜しんでいます。
面白い逸話を一つ 彼女がお祭りに出くわします。人出は32000人なのに警官ははたったの25人でした。これでけが人もなく、乱暴者も居ないで整然とお祭りをやっていたのです。この警官の少なさに彼女は驚いています。 つまり集まった人々は、ちゃんとした心得があったのでした。
最近の花火大会で、何人もの死者が出たりしましたが、当時の人は我先に争うような人は居ませんでした。みんな自律性を持っていました。実に良い時代でした。
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2008年10月30日(木)23:21 | トラックバック(0) | コメント(0) | 書籍 (短歌、漢詩) | 管理
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