Cat Schroedinger の 部屋
 
                        雑談の部屋です。
 



落語の中の言葉

「抜け雀」の中で、古今亭志ん朝はついたてに描いた鳥に対して「この鳥は、落ちて死ぬな」と言います。志ん生は「この鳥は、落ちるな」と言います。最近は「落ちる」と言う言葉を使いません。「落鳥」とか、「鳥が落ちる」とは鳥が死ぬことです。通じないといけないので、「落ちて」で既に死んでいるのですが、「死ぬな」と言っているのです。

 辞書によれば、「落ちる」とは、けもの・鳥・魚などが死ぬ。事と有りますが、鳥以外の使用は知りませんでした。

 落語家さんと話したとき、最近は言葉が通じないので、違う言葉を使う事も出来るけれど、雰囲気が違ったり、肝心のおちの時に話が合わなくなったりするので、とても気をつけて昔の話を作り替えたりしているそうです。

 そういえば船を舫(もや)う、と言う言葉も通じないそうです。「船徳」で船頭の徳さんが一生懸命船を漕ぎ出そうとしますが、一向に船は動きません。すると客が
「船頭さん~船が舫ってあるよ!」
「へ?、ゲッ! 舫やってあると船は出ないことになっております。」 

と以前はやっていましたが、最近は
「船頭さん~船が舫ってあるよ!」
 「へ?、ゲッ! つないであると船は出ないことになっております。」
と上手く言い直しています。繰り返しで言い換えることによって、船に乗り慣れた客と、素人の船頭の対比まで出して言います。

 「居残り左平次」という話のおちで、無銭飲食した左平次を厄介払いしようとする主人に対して、左平次は実はお尋ね者だとすごみ、路銀から、着物から、履き物までせしめ、堂々と表から出ていきます。
 主人が「人をおこわにかけやがって!」と怒ると、
 若い衆が「旦那の頭がごま塩ですから」
と言うのが本来のおちです。
「おこわにかける」とは一杯くわす。美人局にかけると言う意味ですが、今では殆ど使われません。これではせっかくの落語のおちも解りません。

立川談志が始めたそうですが、
 若い衆が「あんな奴、裏から帰したらどうなんです?」と言うと
 旦那が「あんな奴に裏を返されたら、後が怖い」と言うおちになっています。
最近の落語ではみんなこれになっています。とても良いいおちだと感心しました。

「裏を返す」??
最近ではこれも通じないかも知れませんね?
もともとは、遊郭用語で、客が初めて遊女と遊ぶのが、「初会」吉原の一流どころの太夫ともなると、「初会」で色事などは無いのが普通でした。二度目が「裏を返す」と言いました。三回目からは「なじみ」と言いました。
現代でも飲み屋など、一度行って気に入ると、次に行ったとき「裏を返しに来たよ」などと使います。

 こう言っている私も、着物の柄や、生地の描写は解らないことがいっぱいあります。時々は調べるのですが、物は分かっても、当時どんな人達が着ていたのかとか、立派な武士なのか、身代の良い商人か、粋な職人かなど想像するくらいがやっとです。

 現代なら、
 渋い青色の英國屋で仕立てたスーツに、のりのきいた白いワイシャツ、同色のエルメスのネクタイをちょっと緩めに締めて、腕には飾り気のないピアジェの時計、少し使い込んだタニザワのダレスバック、靴はと見れば、フェロガモのウイングチップ・・・

 ちょっと様子を変えると、
 大きな縦縞のベルサーチのスーツ、シルクの光を放つ紫色のシャツに、真っ赤なネクタイ、肩から真っ白な長い襟巻きを結ばないでだらりとさげ、腕にはダイヤがちりばめたローレックス、反対の腕には金のブレスレット、太い指に大きな金のリング、エナメルの靴には曇り一つ無い。夜だというのに濃い色のサングラスをかけて・・・描写だけでもおおよそ見当が付きます。(笑)



2007年1月12日(金)23:00 | トラックバック(0) | コメント(0) | 落語 | 管理

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