目黒のサンマ |
|
| 昨日は今年初めてサンマを食べました。今年はサンマが豊漁だそうで喜ばしいことです。
サンマを食べると思い出すのは「目黒のサンマ」です。
よく知られた噺ですが、ざっとあらすじを書くと、
ある殿様、演者によっては赤井御門守が、急に馬で野駆けるに出ます。家来たちは大慌てで追いかけます。
散々走って休憩するとお腹が減ってきました。「食事をもて」と言いますが、急な事なので弁当がありません。殿様一同腹をすかせているところに嗅いだことのない旨そうな匂いが漂ってきました。
おつきの小姓に 「金弥(きんや)」
「お召しにござります。」
「なんじゃ、この匂いは?」
「農家におきまして、昼の際、秋刀魚を焼きうる匂いにござります。」
「ふぅー、秋刀魚と申す。魚(うお)か? よい匂いだのぉ。 余は、まだ食したことはない。」
「はっ、下種魚(げすうお)にござります。 下種、下人が口にいたします。 お上(かみ)様の、お口に入るものではござりません。」
「控えっ。 下種、下人が口にいたし、余の口に合わんとは、太平の贅(ぜい)と申するもの。 武士が一朝(いっちょう:ひとたび)事があり、千軍万馬(せんぐんばんば)往来の身入り、あれは食えん、これは嫌いだで、武士が務まるか。
苦しゅうない、持参いたせ。」
理屈に合っているので百姓に買ってきます。
あまりのおいしさに殿はすっかり気に入ります。
「お殿様に申し上げます。」
「なんじゃ?」
「お屋敷へお帰りの節、上目黒におきまして、秋刀魚を食せしことは、どうぞ、ご口外、ご無用に願いとう存じます。」
「下種魚にござりますので、重役らの耳に入りますと、我々共の落ち度にあいなります。ご他言、ご無用に願いとう存じます。」
「そのほうらの迷惑となることなら、余は言わんぞ。」
その後殿さまはサンマが食べたくて、食べたくて仕方ありません。
「金弥。」
「お召しにござりますか?」
「目黒はよいとこだのぉ。」
「御意にござります。気温、風景、共に備わりまして。」
「いやいや、気温だの、風景を愛(め)でるのでない。 あの折、食した魚な、秋刀魚と申すか?」
「その儀は内密に、私どもがお咎めを・・・」
ある日、親類方に接待され「如何なるお料理でも」と言われて殿さまは待ってましたとばかりに
「余はサンマを食したし!」 相手は大変なことになり、すぐさま市場に買いに行きます。油が強いのでお体に害があってはいけない、骨があるのでと、蒸したり、骨を一本一本毛抜きで抜いて、分けの分からない料理にして、出します。
臭いはサンマだがさっぱりの味です。
「秋刀魚か?」
「御意にござります。」
「いず方より、取り寄せた?」
「人を日本橋の魚河岸へ走らせまして、魚は、銚子の沖の本場にござります。」
「何、これが、日本橋。 それで、いかん。秋刀魚は目黒に限るぞ。」
とても好きな噺です。食べることしか楽しみの無い大名の暮らし、世俗の事に無知な様子を滑稽に上手く語っています。
その目黒でサンマはどのようにして入手できたのかはいろんな説があるようです。
目黒川には大正時代まで船着き場があって、品川から船が上がってきていたそうです。
| |
|
2018年9月1日(土)23:07 | トラックバック(0) | コメント(0) | 落語 | 管理
|