Cat Schroedinger の 部屋
 
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2008年5月20日を表示

大ネタ二つの落語会

 今日は落語会でしたが、大ネタの「品川心中」と「ねずみ」でした。

 噺家さんも二人でした。こういった場合、普通どちらかが軽い話をするのですが、
 「お互い好き勝手に噺をする・・」と笑いを取っていました。

 まずは「品川心中」から

 品川は江戸四宿といいまして、江戸時代は江戸ではなくて、宿でした。
東海道…品川宿 甲州街道…内藤新宿 中山道…板橋宿  日光街道・奥州街道…千住宿

 色町は、第一に吉原これを北国(ほっこく)といい、須崎を辰巳、品川を南と俗に言ったそうです。

 品川の宿で板頭(いたかしら)を張っていた遊女お染めですが、歳には勝てず、客が付かないでお茶を引く日も多くなり始めます。
 
 この様なところには様々なしきたりがあり、紋日という物がありました。移り替え(うつりかえ)といって、季節のころもがえをするのですが、遊里などでは着物を飾り、夜具を積み上げて、ご馳走するなど出費が多いのでした。
 「巻紙の痩せる苦界の紋日前」と手紙を出しても、お客が援助してくれません。

「このままじゃ紋日の移り替えができない。」
「いっそ死んじまおう!、でも移り替えが出来なくて死んだのでは悔しいから心中しよう」と、一番手頃で間抜けな金蔵を選びます。

 不承不承の金蔵を無理矢理海に放り込んで、自分も飛び込もうとすると、贔屓の旦那から移り替えのお金が届いたといわれ、心中を思いとどまります。

 金蔵も、飛び込んだのが浅瀬で、ずぶ濡れで親方の所に帰り、賭博中のみんなを驚かせます。



 ここまでは前半で、後半の話があります。滅多に演じられなくなりましたが、後半は「仕返し」という別題があります。

 女にだまされて悔しい思いをした金蔵が、親方と狂言をうち、幽霊話でお染めを脅したところ、さすがのお染めも因果話に恐ろしくなり、命の次に大事な髪を切ってしまいます。

 そこで金蔵が現れて「あんまり男を釣るから、髪を切って比丘(びく)にしてやった」という落ちになります。

 この地口落ち(同音や似通った語を並べ、違う意味を表す洒落。語呂合わせ。)が、そうは思いませんが、不出来といわれています。

 話全体がやや暗い印象を与え、最近後半は殆ど演じられません。
 
 今日の話も前半だけでしたが、主人公の金蔵はう~と間抜けに演じられます。話が暗いだけに、滑稽さで笑いを取る演出でした。

 「居残り佐平次」「付き馬」など客が店に対して酷いことをするような話は、現代では首をかしげたくなるかもしれませんが、当時の感覚では、店は阿漕な商売とされていました。
 ですからそういった店に悪さをすることは、一種の憂さ晴らしでした。

 この様な所では、お客と遊女とその店とはダマ仕合でした。そういった関係を知っていないと、この手の落語は心から楽しめません。

 以前聞いた、志ん朝では金蔵は、そんなには間抜けでなくて、おっちょこちょいで、無邪気で、変に気っぷが良いところがあるように演じられます。お染めも単なる悪ではなくて、売れなくなった遊女の悲哀を感じさせます。

 お染めも金蔵からお金を巻き上げたわけでは無くて、それほど好きでもないのに、心中に誘っただけです。心中の原因が解決したから、ちゃっかり中止しただけですから、それほど悪人ではありません。

 そして両者とも死をそれほど恐れていないところも、江戸時代なのです。心中などは、一種のパーフォーマンスでもありました。これも現代人からは、理解しにくいところです。

 本当はそういった噺だったのでしょう。時代と共に、間抜けさだけが、誇張された噺になったような気がします。

 陰惨な噺も、最後には軽やかな笑い話に終わるのも、私が落語好きな所以です。



2008年5月20日(火)23:00 | トラックバック(0) | コメント(0) | 落語 | 管理


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