「中村仲蔵」 |
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| 「八代目林家正蔵」の「中村仲蔵」を聞きました。正蔵の話には歌舞伎の話が多くあります。落語が盛んだった頃は、一番の娯楽と言えば歌舞伎でした。ですから歌舞伎の話は落語には沢山出てきます。
志ん生も、「私も若い頃は羽左右衛門に似ていると言われ・・・」などと言ったりしました。もてるのなんの、「煙管の雨が降るようだ・・・」これは「助六」からのたとえです。
歌舞伎を観ない人も多くなり、次第にこの様な話はされなくなりました。また落語の中でも、歌舞伎に関連したジョークも使われなくなりました。西洋人はシェークスピアや、有名なオペラはおおよそ知っているのに、日本人が歌舞伎や、能を全く知らないのは残念です。これではせっかくの落語も本当には理解できません。
中村仲蔵の名義は四世までで、なかでも初代と三代目は有名です。噺は初代の話です。 初代仲蔵は、四代目市川団十郎に認められ、名題に抜擢されます。
この噺では、仲蔵が名題になり、『忠臣蔵』を上演するということになったものの、彼に与えられた役は、斧定九郎という端役。これは忠臣蔵の五段目、ちょうどお昼時に出てきて、観客が食事しているときに、すぐに殺される役です。
気落ちして上方にでも行こうかと思うのですが、奥さんの助言で気を取りなおし、名役にまで仕上げるという苦心談です。
歌舞伎と、実際の赤穂浪士の討ち入りとは、かなり話が違います。事件が起こったのは元禄14年(1701年)ですが、芝居が掛けられたのは寛延元年(1748年)です。
話は幕府の目を恐れて、室町時代の設定になっています。十一段の長い話です。ちなみに一段目大序は「兜改め」、二段目は「松伐り」、三段目「進物場」「刃傷」、四段目「判官切腹」、五段目にこの話になります。
登場人物は、塩冶判官(内匠頭)の悪家老斧九太夫から勘当されて、盗賊になった「斧定九郎」、塩冶判官(内匠頭)の家来の「早野勘平」、腰元で恋人の「お軽」お軽の父である「与市兵衛」などです。
話はややこしいのですが、斧定九郎は100両で、身売りしたお軽の手付け金50両を強奪するやいなや、すぐに勘平に鉄砲で撃たれてしまいます。
落語の中でも語られますが、現代でもリアルな立ち回りです。斧定九郎は非情な悪人として見事な演出です。 以前は赤塗りの単純な悪人であったのを、中村仲蔵が非情さを表現した定九郎にしたのです。大変な評判になって芝居は大当たりとなります。
中村仲蔵は、師匠から誉められ、煙草入れを貰います。 オチは、師匠の家から帰ってくるなり、奥さんを拝み出したので、照れながら、
「なんだい、さっきは落ち込んでいたかと思うと、今度はあたしを拝んだりして。煙に巻かれるよぅ」 「煙に巻かれる? あぁ、貰ったのは煙草入れ。」
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2008年5月1日(木)23:56 | トラックバック(0) | コメント(0) | 落語 | 管理
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