Cat Schroedinger の 部屋
 
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2007年1月10日を表示

抜け雀

 「古今亭志ん朝」の抜け雀を聴きました。とても好きな話です。親父さんの「古今亭志ん生」でも聴いたことがありますし、お兄さんの「金原亭馬生(十代目)」でも聴いたことがあります。

あらすじ
 まくらに、ごまの蠅とか、雲助とか、駕籠舁(かごか)きなど、旅人に悪さをする良くない職業であったことを、それとなく話します。

 何処の旅籠でも声を掛けない、身なりの悪い武士につい声を掛けてしまって、安旅籠に泊めることになってしまいます。入ってきた男。見た目にも一文無し風なので、店の者としてもハラハラしていたのですが、案の定、5日たち、6日たちしても、男はいっこうに支払う気配がありません。7日たってたまりかねた店の主人が、そろそろ一度精算を……と声をかけると、男はケロッとした顔をして、「ない」と言います。

 「ない」と言われて、「はいそうですか」と答えていたのでは、店はやっていけません。主人も人が良くて、何か仕事でもしろというと、絵描きだから絵を描いてやると言います。

 先だって一文無しを泊めてしまった職人が、作った「ついたて」に、いやがる主人におかまいなしで、男がふすまに見事な雀を描きます。それはまるで生きているかのようで、今にもふすまから抜け出してきそうなほど、生き生きとしています。

 描き終わった男は、
「すまぬが、今は一文無し。この絵を借金の形に置いてゆく。焼失はいたいかたないが、この絵を欲しいという者が現れても、決して売ってはならぬぞ。」
と主人に言います。

 店の主人も、お人好しで、男の描いた雀の見事さに感服し、なにも言わずに男を送り出しました。

 明くる朝、家の中で雀のさえずる音がする。木戸を開けると、男の描いた雀がふすまから抜け出し、表へ飛んでいってチーチーとさえずり、又戻ってくる。噂が広まり、その雀見たさで訪れる客が現れ、旅籠はたいそう繁盛します。雀の評判は全国に伝わり、旅籠を訪れる客が後を絶たず、店はいつしか「雀のお宿」と呼ばれるまでになりました。

 とうとう城主の大久保加賀守の耳にも入り、千両で購入いたすという話まで持ち上がります。ところが売ってはいけないと言われているため、売ることが出来ません。
 
 しばらくして、白髪の老人が旅籠を訪れ、ふすまの雀を見るなり、「この絵は素人に毛の生えたような物だ。」とさんざんです。このままだと雀は落鳥すると、主人に言います。どういうことかと主人が問いただすと、老人は、

「なるほど確かに雀は見事に描けている。しかし、このままでは雀が体を休めるところがない。」「名人という者は手抜かりがあってはならない。」

 老人は、主人から筆を借りて籠を描き、「これで、雀の休むところができた。」と主人に言います。

 この籠を観た城主の大久保加賀守はさらに二千両の値を付けます。
 
 ある日旅籠を訪れた男に、店の主人は感謝の言葉をかけつつ、老人の話をします。男はその話を聞いて、未熟な自分を恥じ、その老人は私の父親だとうち明けます。絵に向かって、無沙汰を詫びます。店の主人は、「こんなに立派な絵を描く息子を持って、お父様もさぞかしご満足でしょう」と男に言います。すると男は、

「いやいや、自分は親不孝だ、親を籠描きにした。」



2007年1月10日(水)23:15 | トラックバック(0) | コメント(0) | 落語 | 管理


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