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「世の中ついでに生きてたい」

「世の中ついでに生きてたい」 古今亭 志ん朝 (著) 出版社: 河出書房新社

山藤章二 金原亭馬生  池波正太郎 池田弥三郎 結城昌治 中村勘九郎 荻野アンナ
江国滋 中村江里子 林家こぶ平 との対談集です。志ん朝は座談の名手でもありました。落語の話、芸談議、父志ん生の思い出などが語られています。

芸人は普段はなかなか稽古のことや、苦労話や、話の工夫のことを話しませんが、対談の中で、上手く行かなかった話や、稽古の仕方、話の持って行き方、狙いなどが、ありのままに話されています。

名人と言われた父志ん生と比較されることや、芸に対する違いも、良いところ良くないところと、志ん朝の心の中そのままに語られています。

それにしても名人、上手と言うのは、やはり一分の才能と、九の努力のようです。志ん生も志ん朝も、やったとは言わないし、特に志ん生は練習したとは到底思わせない自然で破天荒のように聞こえるけど、実は非常に練習し、いつも研究していたようです。そういった面では志ん朝は落語をきちんとやりたい、いわゆる文楽のようになりたかったと言っています。

志ん生が悩んでいた志ん朝に言った言葉、
  「たかが噺家じゃないか、おまえ、だからきにすることないよ。落ちぶれたって、たかが噺家だよ。大きな会社の社長が乞食になるんじゃない。噺家なんだから、おまえ、出世したって噺家だし、落ちぶれたって噺家だ。」
素晴らしい言葉です。やっぱり親である志ん生には敵いませんね!心意気が違う!

志ん朝がテレビの仕事に行くので朝6時頃起きて、がたがたやってたら、倒れたあとの親父の志ん生が起きてきて、

  「何してんだい」ってえから、
  「これから仕事なんだよ」て言ったら、

  「おまえ、噺家がこんなに早く起きちゃだめだよ、新聞でも配達に行くのかと思ったよ」
  「いやそうじゃないんだよ。撮影があんだよ」ってったら、
  「つまんないことしてやんなあ」っていわれたの

志ん朝の中に親父に憧れるものと、嫌うものが同時に存在しています。この二つの話、志ん朝が志ん生になれないと言うか、なろうとしない人生観が現れていてとても良い話と思いました。
「世の中ついでに生きてたい」志ん朝の願望でもあります。このところがこの本の題になっています。



2005年10月5日(水)23:19 | トラックバック(1) | コメント(0) | 落語 | 管理


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